福袋【海へ行くふたり】想像ツイまとめ

海へ行ったことのないリリ⚫クについての想像ツイまとめです。

※死を連想させる表現があります※

―――

季節は秋から冬になる頃。
ふうっとため息をつく事が多くなったリリ。その様子を遠目から見守るしおりともくじ。
「最近元気ないわねえ」
「リリ クちゃんも歳だからねえ」
「そういえば」
しおがふと思い出しポツリと呟く。
「ネコちゃんって死ぬ時にどこかへ居なくなるってホントなのかしら?」それを聞くやいなやもくは顔を真っ赤にして声を荒らげる。
「リリ クちゃんはどこにも行きません!!!縁起でもないこと言わないでちょうだい!!」
「ご、ごめん…」
もくの勢いに気圧されしおは素直に謝る。
「でもねえ、そろそろ覚悟はしとかないといけないのかねえ…」
しばしの沈黙。
「うわあああん!やっぱやだーーー!!!!」
「ちょ、落ち着いてよー!!」
突然叫び出すもくを宥めるしお。

その様子を眺めながら傑作はこそっとリリに話しかける。
「リリ ク…最近元気ないね」
「うーん、最近体が重〜いのよねえ、ダルいっていうか…とにかく動く気力がないのよ。トシかしらね〜」
傑作は少し考えて、そして一言。
「ねえリリ ク、明日海、行こっか」

自転車の前カゴにリリを乗せ風を切る傑作。
「リリ ク、寒くない?」
「傑作の頭みたいなモジャモシャの毛があるから大丈夫よ」
「そっか」
ふふっと笑い軽快にペダルをこぐ。

「リリ ク、着いたよ」
いつの間にか眠っていたリリは傑作に起こされゆっくり目を開けた。
目の前にはとても広々と、青く輝く空間があった。
空の青とは違う、青。
見たことの無い光景に目を見開くリリ。
「どう?これが、海だよ」
傑作は楽しそうにリリに声をかける。
「キレイねぇ…」
波の音だけが響く、静かな時間。
それを遮るかのように傑作はリリを抱き上げる。
「じゃ、行こっか!」
「え?行くって…」
へへっといたずらっぽく笑い傑作は歩き出す。

リリは思わず顔をすぼめた。
「海って本当にしょっぱいのねえ」
「でしょ?」
以前言っていた事を確かめるためほんの少しだけ海の水を舐めてみた。
こんなに広い広い水溜まりの全てが塩水だなんて!確かめるまでは半信半疑だった。
続けてリリは言う。
「それに、うーんと広いのもホント」
「うん」
傑作が頷き、それからしばらく2人で波打ち際に座り海を眺めた。
日が傾き始めている。

「傑作」
「ん?」
「ありがとね」
「どういたしまして」
照れくさそうに鼻の頭を掻きながら笑う傑作。
「…もうこんなこともできなくなるわね」
「…」
お互い真っ直ぐ海を見つめ、表情はわからない。
「傑作に出会えて、アタシ…」
「帰ろっか!」
「!!」
勢いよく立ち上がりリリの言葉を半ば叫ぶように遮った傑作の顔は、見えない。
声は、少し怒っているような、淋しいような。
そんな気がしたリリの予想を裏切り傑作は笑顔で振り返った。
「また来ようね、海!」
予想外の表情と言葉にリリは少し驚き目を丸くしていたが一瞬の後、ふっといつもの笑みを取り戻し「そうね」と言った。

再びリリをカゴに乗せペダルをこぐ傑作。
帰り道、2人に会話は無かった。

ぽつり。

雨かしら、とリリは空を見上げた。
見上げた先には夕日に染まった傑作の顔。いつもの優しい笑みは影を潜め、代わりに涙を零していた。
「リリ ク」
「何?」
「ごめんね、今だけ」
「ええ」
自転車を止めリリを抱き抱える傑作。
お腹に顔を埋め泣きじゃくる。
まだまだ子供なんだから、と呆れながらも目の前のもじゃもじゃに前足を乗せポンポンと優しく叩く。
「ありがとね」
自分にも聞こえないくらいの透明な声で呟き、目を閉じる。

涙と波の音が重なる。

「はあ〜」
「何よ、おっきなため息なんかついて」
「そりゃつきたくもなるでしょ。今日は一周忌なんですよ!そう…一周忌…うわああああん!!!」
「んもお〜わかってるって!それよりこっち手伝ってくれない!?」
「それよりってなにさ!これより大事なことなんてある!?」
「その一周忌の準備をしてるんでしょ!!いい加減メソメソしないで!私だって悲しいんだからね!!」

今日もはんせい堂は賑やかだ。
店をうるさく彩る2人を見守るひとりは、今はいない。

「傑作くーん!ちょっとこっち手伝ってくれない?」
しおに呼ばれ傑作は「はーい!」と元気よく返事をし、少し立ち止まり、空を見上げた。
よく晴れた青い空に向かって1度だけ深呼吸をした。
そして、にっこりと笑顔を浮かべ、駆け出した。

そよ風を感じた。

おわり


ずっと温めてたっていうか心に溜めてたお話なんですが後半は悲しすぎて泣いてて考えられなかったのでさっき文字打ちながら考えてたんですけどその割に締めがとてつもなくいい感じに主題歌と重ねられてすごいいい出来なのではと自画自賛してます👏👏まだ推敲しないとだけど!
―――
以上。

pixivにupしました!
うみ、なみ、なみだ、 | 九条湯壱 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16907218